東京理科大学 先進工学部
物理工学科 麻生研究室

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地震の発生メカニズム

地震がなぜ起こるのか、というのは非常に重要ながらも難しい問題です。自然界における地震の発生条件と言えるものは、少なくともまだ分かっていませんし、決定論的には永遠に分からないかもしれません。しかしながら、どのように個々の地震が発生したのか、ということはある程度調べることができます。そうした観測事実を積み重ねていくことが、地震に関する理解を深めるためには重要です。また、発生したての地震が、どれくらい大きな地震まで成長するのかも、巨大地震の理解には鍵となる問題です。実際には、ミクロな不均質により、紙一重のところで、地震が終了するか、成長しつづけるか、決まっている可能性もあります。このような予測可能性に関わる大問題についても、大きな地震と小さな地震を包括的に理解することで、何かわかる事があるのではないかと考えています。

地震発生システム学の創成

地震の震源では、様々な物理・化学プロセスが働いています。このような素過程を一つ一つ突き詰めることも大切ですが、一方で、ミクロなプロセスを不均質まで含めて全て把握することは、現実的に不可能です。マクロな観測量と照合していく意味でも、地震現象をマクロな地震発生システムとして捉えることが大事だと考えています。

地震統計物理学の創成

理学としての地震学の分野には、地震の統計的特徴に着目して現象論としての地震活動の理解を追求する統計地震学と、地震の震源での物理現象を追求する地震物理学(震源物理学)という、二大分野があります。この二分野では、解析に用いるデータの違い(地震のリストか地震波形か)、扱う地震数の違い(多数か少数か)、考慮する個々の震源範囲の違い(時空間的な点か有限領域か)、と言った目に見える差異があり、その根底には、大きな研究目標における違い(現象論的か本質論的か)、科学としての考え方の違い(経験論的か合理論的か)、アプローチの違い(帰納的か演繹的か)、解析における前提条件の違い(確率論的な決定論的か)、という根本的な違いがあります。しかしながら、地震現象の理解には、どちらかに偏るのではなく、双方の考え方を理解し合いながら、取り組む必要があります。本研究室では、統計地震学と地震物理学の双方に幅広く取り組むことで、地震統計物理学の創成を目指しています。これは、ニュートン力学と熱力学を統計力学が繋いだのと同じように、地震学におけるパラダイムシフトになると考えています。